私設図書館「みんなの図書館 さんかく焼津」は、JR東海道線 焼津駅の駅前通り商店街にあります。その先には、ターントクルこども館(焼津おもちゃ美術館・やいづえほんと)があって、商店街にはカフェや駄菓子店も。人の流れは少ないものの、あたたかい雰囲気があります。
しかし、さんかく焼津館長の土肥潤也さんに話をうかがうと
「ここにお店ができるようになったのは、さんかく焼津が2年前にオープンした後なんです。その前は昔のままの商店街で、シャッターが下りたままの店舗がもっとありました」とのこと。
さんかく焼津のシステムは、月額2,000円で本棚オーナーは1区画20cm×50cmのスペースをレンタルして好きな本を並べられ、利用者は初期登録300円を支払えば、以降は無料で2週間本を貸りることができます。
もちろん、閲覧だけなら無料です。
さんかく焼津がオープンしたのは2020年3月3日、それから約2年間で(一社)トリナスが運営する「さんかく沼津」や「おんせん図書館みかん」のほか、さまざまなバックグラウンドを持つ姉妹館が全国各地に誕生しています。
さんかく焼津館内を見渡してみると、広さは約27平米(約15畳)ほど。仕切りをつけて、コーヒースタンドやフードの販売ができるブースがあるけれど、全体が見通せるコンパクトな空間です。
中央に読書にちょうどいいサイズの小さなデスクと椅子、パソコン作業ができる高さのカウンター席があります。「思っていたより小さい」というのが、正直な感想です。
空間の間取りとサイズ感については、まち座の記事がとてもわかりやすいです。
参考 図解 本のある小空間 正木哲也/vol.3 みんなの図書館さんかくまち座 今日の建築・都市・まちづくり
利用者が持ってきた(と思われる)お菓子や、手作り(と思われる)クッションなど、この場所にいるだけで、ここに愛着をもって大切にしている人の気配を感じます。
本棚から一冊を選んで読書をしました。平日の昼間ということもあって、商店街も静かで人通りもほとんどありません。
しかし、しばらく経つと、しましまコーヒースタンドに立ち寄る常連客が現れ、商店街の新商品や何気ない日常会話が交わされます。さらに、アーケードの通路に設置されたアウトドア用チェアでくつろぐ人、立ち止まって話しかける通行人、慌てて駆け込んで本の返却をする高齢女性など。
小さいけれど、ここにはなにか人を立ち止まらせる磁力があるのかもしれません。
現在、約50個の棚にそれぞれオーナーがいます。この本棚をビジネスのPRのために利用している人は思ったよりも少なく、自分の好きなものや趣味を知ってもらいたいという気持ちで利用している人が多い印象で、DJやウィキペディアンなど、いろんな趣味の人たちがいました。
それだけでなく、性別も年代もさまざま。
さんかく沼津よりも小説が充実している印象です。コミックやライトノベルも多いかも。
これだけ本があっても、ここにしかない選書があって、焼津と沼津でも微妙にカラーが違うのがおもしろいです。
さんかく焼津がオープンして約2年、その間に同じシステムを使った姉妹館がたくさん誕生しました。
焼津の街にフォーカスしてみても、2月22日にはさんかく焼津のお向かいさん、カフェ&コミュニティスペース「PLAY BALL ! Cafe」内に、シルクスクリーンのワークスペース「suru.suru.」がオープン予定。
さんかく焼津を運営する(一社)トリナスも、新たな物件で新たな実験をスタートしようとしています。コラボレーションサロンten.もその一つ。商店街の2拠点目として、年間10万円で自由に利用できるスペースだとか。
焼津の駅前商店街に誕生した拠点がそれぞれに作用し合って、また今年もいろいろな動きがありそうです。
[みんなの図書館 さんかく焼津]
住所 :静岡県焼津市栄町3-3-33
営業時間・定休日:営業カレンダーをご確認ください
運営:(一社)トリナス
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