2018年の書肆ハニカム堂とgrowbooksとOn Ridgeline(前編)

2018年夏にgrowbooks店主と開店当初からの常連だった書肆ハニカム堂店主、そして、両方のファンである私(On Ridgeline 編集長・森岡)とで鼎談を行いました。

謎の多いgrowbooksの成り立ちと、閉店した今も「街の本屋」として存在することへの想い。さらに、書肆ハニカム堂がオープンするまでの経緯など、じっくり話を聞きました。

2018年8月に行ったインタビューでしたが、諸般の事情でお蔵入りとなっていました。それをOn Ridgelineで一部掲載します。

1万2000字を超えるロングバージョン記事(無料版前後編の2.5倍のボリューム!)を200円で販売中です。On Ridgeline 無料版とは、打って変わってさらに突っ込んだ鋭い内容となっています!!!!(growbooks写真やオープン当時の書肆ハニカム堂写真もあります!)
※ 購入金額はOn Ridgeline の運営資金となります。

参考 街の本屋growbooksの終わりと古本屋 書肆ハニカム堂のはじまり[1万字超インタビュー]note版 別冊On Ridgeline


ヴィレッジヴァンガードで働いていたgrowbooks店主

On Ridgeline まずはgrowbooksの成り立ちについて教えてください。以前、本屋を始めたきっかけはヴィレッジヴァンガードで働いた経験があったからと言っていたね。

growbooks  そう。三重県にあるヴィレッジヴァンガードで大学生時代にバイトしていた。まだ、株式会社になる前で、ヴィレッジヴァンガードが「大人の本屋」って呼ばれていた頃ね。そうそう、そこでサブカルチャーに触れていろいろなことを知った。当時はそこまで本好きじゃなかったよね。今も本はあんまり読まないけど。

On Ridgeline 前にそれ聞いて、「本屋なのに本を読まない」っていう話が衝撃でした。

growbooks 俺は本屋の雰囲気が好きなんだよね、とくにあの頃のヴィレッジヴァンガードの雰囲気が。
本ってどのジャンルでも関連書とか、専門書ってあるでしょ? だから、本屋ってどんなジャンルも扱える貴重な場所だと思う。
その時にはもう、自分の店をやりたいって思いがあったから、大学卒業後は全国展開している大型書店に就職した。そこで文庫・新書担当として2年くらい働いたかな。

その後、地元へ帰ってきて、また本屋で2年くらい働いた。一年かけて開店の準備して、2008年に「growbooks」をオープンした。

オープン初日に「これじゃやっていけない」と悟った(growbooks)

On Ridgeline 当時はどんな本屋にしようと考えていた?

growbooks 今思うと本屋をオープンするための知識が足りなかった。新刊書店は、本の問屋である取次と委託販売契約する必要がある。2008年当時は、開業にあたって仕入れ予算を伝えると、取次から全国で平均的に売れている本が勝手に送られてきた。

だから、最初はどこにでもある普通の本屋としてスタートするしかないわけ。取次からすると、「そこからがんばって売上を伸ばして、自分でお店を変えてください」ってこと。

自分で一から本を揃えて本屋をオープンすることはできなかった。

ハニカム堂 僕はgrowbooksがオープンした半年後から通うようになったけど、その時から雑誌のバックナンバーは充実していた。当時は漫画の単行本がたくさんあったね。

growbooks 当時は、お店の壁一面が漫画の単行本だったね。
オープン初日は、近所の子どもたちが来てにぎわったけど、閉店後「これだけしか売れない」って絶望した。

その時点でわかったね、「これじゃ、やっていけない」って。でも、だんだんとハニカムみたいな、気になる客が来るようになった。

ハニカム堂 当時からクセのある本屋だなと思った。この辺にそういう店はないから貴重だった。

人と街の変化を店の中から見ている10年だった(growbooks)

On Ridgeline 10年近く経営していて、お客さんとの思い出とかある? 以前、お店に来ていた女の子が、大人になってまた来てくれた話を聞いたけど。

growbooks はじめは、大学生で家が近所だからって来てくれた。大学卒業して就職したって話を聞いて、そのうち「結婚します」って、最後の方は子どもを連れてお店に来てくれるようになった。

すごいよね。自分はオープンしてから何も環境が変わってないのに、まわりの変化が半端ないの。

オープン当初、『ワンピース』の単行本を買ってた子どもたちが、大学生になってたりする。その変化を店の中から見ている。そんな10年だったかなあ。

On Ridgeline growbooksは早朝働いて、その後お店開いていたでしょ? 働き通しですごいなあって思っていた。

growbooks 全然そんなことない。昼間とか店で寝てたしね。映画観たり。もっと前はコンビニで働いてたから、夜22時から6時までコンビニで、そこから4時間くらい寝て、お昼から店の営業。
今思えば、よくやれたなって思う。でも、そういう生活が俺の中で当り前だった。起きたら客がいたっていうことはあったよ。それで笑われたこともあった。

On Ridgeline でもしょうがないよ! だって朝から働いているでしょ!みんな知らないだろうけど、この人はすっごく働いているんだよ!!!

growbooks でも、近所の人はうらやましがっていたけどねー。「客もいない店で一人でパソコン触ってるだけで生活できていいね」って。

On Ridgeline できてないよ!(笑) 

次回、後編では「書肆ハニカム堂」がはじまるきっかけ、オープン当時のお話を紹介します。


取材先

growbooks
サブカルチャー臭のする本をセレクト/販売するlikestyle bookstore
本の注文・購入は[河口湖]喫茶室TABiLiON&[沼津]書肆ハニカム堂へ(注文はinstagramのDMでも受付中)。
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書肆ハニカム堂
沼津の週末古本屋。だいたい土日祝営業(14時〜18時)詳しい営業時間、イベント出店などの情報はTwitterをご確認ください。
住所:静岡県沼津市今沢175-5
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文 森岡まこぱ

御殿場市在住。フリーランスで編集・執筆を行う。現在、On RIdgeline運営中。https://note.com/makopa